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医師に求められる医療英語力:学会発表から外国人患者対応(問診)まで

公開:
2026年最新
医師に求められる医療英語力:学会発表から外国人患者対応(問診)まで - ELTスクール 英語学習コラム
田中 達也

執筆者: 田中 達也|ELT日本法人 代表

医師にとって英語は、論文を読むだけのスキルではなくなっています。国際学会での口頭発表やポスターセッションでの質疑応答、増加する外国人患者への問診やインフォームドコンセント——英語が必要になる場面は年々広がっています。

しかし、「論文は読めるが学会の質疑応答が怖い」「専門用語はわかるが患者にわかりやすく英語で説明できない」という悩みを抱える医師は少なくありません。本記事では、医師が英語を使う場面を「学術英語」と「臨床英語」の2軸で整理し、各場面で使える実践的なフレーズ、レベル別の目安、そして多忙な医師でも実行可能な学習戦略までを体系的に解説します。

医師にとって英語は「2つの言語」——学術英語と臨床英語の決定的な違い

医師に求められる英語力を理解するうえで、最も重要なのは「学術英語(Academic English)」と「臨床英語(Clinical English)」という2つの異なるスキルが存在するという認識です。

学術英語とは、英語論文の読解・執筆、国際学会での発表と質疑応答、査読者への回答、国際共同研究でのコミュニケーションに必要な英語です。専門用語を正確に使い、論理的に研究成果を伝える力が求められます。

臨床英語とは、外国人患者の問診、身体診察の指示、検査説明、インフォームドコンセント、退院指導に必要な英語です。学術英語とは正反対に、専門用語を避けて患者にわかる平易な英語(lay term)で説明する力が求められます。

この2つの英語は、求められるスキルの方向性がまったく異なります。たとえば、学術英語では"myocardial infarction"(心筋梗塞)という正確な専門用語を使うことが期待されますが、臨床英語で外国人患者に説明する際には"a heart attack — it means a part of your heart muscle didn't get enough blood"のように平易な表現で伝える必要があります。

日本人医師の多くは、医学部受験で高い英語力を培い、入学後は英語論文を日常的に読むため、リーディング力は一定水準を維持しています。しかし、卒業後は英語を「話す」「書く」「聴く」機会が激減し、特にスピーキング力の不足が学会発表や外国人患者対応で顕在化するのが典型的なパターンです。

本記事では、この「学術英語」と「臨床英語」の2軸に沿って、医師に必要な英語力を場面別に解説していきます。

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学術英語①:国際学会発表を成功させる英語力

国際学会での発表は、多くの医師にとって英語力が試される最大の場面です。プレゼンテーション本体は事前準備で対応できますが、真の難関はその後に待つ質疑応答です。

Oral Presentation:原稿準備とデリバリーのポイント

国際学会での口頭発表(Oral Presentation)では、限られた時間内にIMRAD構造(Introduction→Methods→Results→And→Discussion)に沿って研究成果を伝えます。英語での発表に慣れていない場合、まず押さえるべきは各パートの「定型表現」です。

Introduction(導入)では、研究の背景と目的を簡潔に示します。"The aim of this study was to investigate..."や"Despite advances in [field], [specific gap] remains poorly understood"といった表現が定番です。ここで重要なのは、聴衆に「なぜこの研究が重要なのか」を最初の30秒で伝えることです。

Methods(方法)では、"We conducted a retrospective cohort study involving [number] patients"のように研究デザインと対象を明示します。日本人医師が注意すべきは、医学用語の発音です。ドイツ語由来の用語(例:Gauze、Catheter、Adrenaline)は英語ではまったく異なる発音になることがあり、事前にYouGlishなどのツールで確認しておくことを推奨します。

Results(結果)では、"Our primary endpoint was met with a statistically significant difference (p < 0.001)"のようにデータを簡潔に伝えます。スライドに表示されている数値を読み上げるだけでなく、そのデータが何を意味するのかを「一言で」添えることが、聴衆の理解を助けます。"This represents a 35% relative risk reduction compared to the control group"のように臨床的意義を加えましょう。

Discussion/Conclusion(考察・結論)では、"These findings suggest that..."や"One potential limitation of our study is the relatively small sample size"のように、結果の解釈と研究の限界を述べます。結論では "In conclusion, our study demonstrates that [key finding], which may have implications for [clinical practice/future research]"という型が使いやすいです。

質疑応答(Q&A)——学会発表の「最難関」を攻略する

多くの日本人医師が「学会発表で最も不安なのは質疑応答」と回答しています。プレゼン本体は原稿を準備できますが、Q&Aはその場で英語での即時応答が求められるからです。

しかし、実は質疑応答は事前準備で8割カバーできます。以下のステップで準備しましょう。

ステップ1:想定質問リストの作成。自分の研究のLimitations(限界)、Alternative interpretations(別の解釈)、Clinical implications(臨床的意義)について、想定される質問を10〜15個リストアップします。同じ分野の論文に寄せられたCorrespondence(Letters to the Editor + Author's Reply)を読むと、どのような質問がなされるかのパターンが見えてきます。

ステップ2:回答テンプレートの準備。以下のフレーズを組み合わせて回答を構築します。

  • 質問を受け止める: "Thank you for that excellent question." / "That's a very important point."
  • 回答の核心: "In our study, we addressed this by..." / "That's actually something we considered, and..."
  • Limitationsを認める: "You're right that this is a limitation of our study. We were unable to control for [factor] because..."
  • データがない場合: "That's an interesting point. We don't have data to directly address that question, but based on [related finding], we would hypothesize that..."

ステップ3:質問が聞き取れない場合の対処法。これは恥ずかしいことではなく、非ネイティブ話者にとっては日常的なことです。以下のフレーズを準備しておきましょう。

  • "I'm sorry, could you please repeat the question?"
  • "Just to make sure I understood correctly — are you asking about [your interpretation]?"
  • 座長(Chairperson)に「質問を要約してもらう」ことも有効です。座長は議論を円滑に進める役割があるため、遠慮なく"Could the chair perhaps rephrase the question?"と依頼しましょう。

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Poster Presentation:1-on-1で「語る」力

国際学会に初めて参加する場合、最初に経験するのはポスター発表であることが一般的です。ポスター発表はOral Presentationとは異なり、聴衆との1-on-1の対話が中心になります。

ポスターの前に立っているときに、興味を持った参加者が近づいてきたら、まず簡潔な自己紹介と研究の要約から始めます。"Hi, I'm Dr. [Name] from [Institution] in Japan. This study looked at [brief summary of research question]"のように、30秒で研究の概要を伝えられるElevator Pitchを準備しておきましょう。

ポスターセッション特有のスキルとして、「会話の自然な終了」も重要です。"Thank you for your interest. Please feel free to reach out if you have any further questions — here's my contact information"のように、名刺交換やメールアドレスの交換につなげることで、学会後の人脈構築にも発展します。

また、同じセッションの発表者に自分から声をかけることも推奨されます。"I found your poster on [topic] very interesting. I had a question about your methodology —"のように、相手の研究に対する具体的な関心を示すことで、自然な学術交流が生まれます。

学術英語②:英文論文の執筆と査読対応の英語

英文論文の執筆は、医師のキャリアにおいて学会発表と並ぶ重要な英語スキルです。博士号取得の要件として英文論文の掲載が求められるケースも多く、IMRAD形式での執筆力は医師の学術キャリアを左右します。

IMRAD形式で書く英文論文の基本構造

英文論文はIMRAD(Introduction, Methods, Results, and Discussion)の構造に従います。各セクションには頻出する定型表現があり、これを身につけることで執筆のスピードと質が向上します。

Introductionでは、先行研究のレビューから未解決の課題(research gap)を示し、研究目的を述べます。"Previous studies have demonstrated that..., however, the role of [factor] in [context] remains unclear"→"Therefore, the aim of the present study was to..."という流れが典型的です。

Methodsでは、研究デザインを明確に記述します。"This was a single-center, retrospective observational study conducted between [date] and [date]"のように、Reproducibility(再現性)を意識した具体的記述が求められます。日本人医師が間違えやすい表現として、"discuss about"(正しくは"discuss"で前置詞不要)、"almost patients"(正しくは"most patients")などがあります。

Resultsでは、データを過去形で客観的に報告します。"The median age of the study population was 65 years (IQR: 58–72)"のように、統計値を正確に記載します。

Discussionでは、結果の解釈、先行研究との比較、Limitations、そして今後の研究への示唆を述べます。"Our findings are consistent with those of [Author et al.]"や"The main strength of this study is..."などの表現が頻出します。

Cover Letter・査読者への回答(Reviewer Response)の英語

論文投稿時のCover Letterには、研究の意義とジャーナルへの適合性を簡潔に伝える英語力が必要です。"We believe that our findings will be of interest to the readers of [Journal Name] because..."のような定型表現を押さえておきましょう。

査読者への回答(Response to Reviewers)は、論文がアクセプトされるかを左右する重要な文書です。修正点には丁寧に対応し、反論する場合も外交的な表現を使います。

  • 修正に同意: "We thank the reviewer for this valuable suggestion. We have revised the manuscript accordingly."
  • 丁寧に反論: "We appreciate the reviewer's perspective on this point. However, we respectfully disagree because [reason]. We have added the following clarification to the Discussion section."
  • 追加データを提示: "In response to the reviewer's request, we have conducted an additional analysis, which is now included as Supplementary Table 2."

DeepLやChatGPTなどのAIツールが普及した現在でも、翻訳された英文のニュアンスが意図通りかを確認する英語力は不可欠です。AIが生成した文章をそのまま投稿するのではなく、自分で読み返し、自分の研究の意図を正確に反映しているかを判断できる力を維持することが重要です。

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臨床英語:外国人患者の問診からインフォームドコンセントまで

インバウンド観光客の増加や在日外国人の増加に伴い、日本の医療機関で外国人患者に英語で対応する場面は確実に増えています。学術英語とは異なり、臨床英語では専門用語を避け、患者が理解できる平易な英語で正確に情報を伝える力が求められます。

問診(History Taking)の英語:主訴・現病歴・既往歴を聞き出す

問診は外国人患者対応の入り口であり、最も重要なプロセスです。正確な問診ができれば、その後の診察・検査・治療の精度が大きく向上します。

主訴の聴取では、オープンクエスチョンから始めるのが基本です。

  • "What brings you here today?"(今日はどうされましたか?)——"What's wrong with you?"より自然で丁寧な表現です。
  • "When did it start?"(いつ始まりましたか?)
  • "Has this happened before?"(以前にも同じことがありましたか?)

痛みの評価には、OPQRST法を英語で活用すると網羅的に聴取できます。

  • O (Onset): "When did the pain first start?"
  • P (Provocation/Palliation): "What makes it better or worse?"
  • Q (Quality): "Can you describe the pain? Is it sharp, dull, burning, or throbbing?"
  • R (Region/Radiation): "Where exactly does it hurt? Does the pain spread to any other area?"
  • S (Severity): "On a scale of 1 to 10, with 10 being the worst pain you've ever felt, how would you rate your pain?"
  • T (Time): "Is the pain constant, or does it come and go?"

既往歴・アレルギー・服薬歴の確認は、安全な医療提供の前提となる重要な聴取項目です。

  • "Do you have any medical conditions, such as diabetes, high blood pressure, or heart disease?"
  • "Have you had any surgeries in the past?"
  • "Are you currently taking any medications — including over-the-counter drugs or supplements?"
  • "Do you have any allergies to medications, food, or anything else?"

身体診察(Physical Examination)の英語

身体診察では、患者への指示を簡潔かつ明確に英語で伝える力が必要です。

  • "Please take off your shirt and lie down on the bed."(シャツを脱いでベッドに横になってください)
  • "I'm going to listen to your chest with a stethoscope. Please breathe in deeply... and breathe out."(聴診器で胸の音を聴きます。大きく息を吸って…吐いてください)
  • "I'm going to press on your abdomen. Please let me know if you feel any pain or discomfort."(お腹を押しますので、痛みや不快感があったら教えてください)
  • "Please follow my finger with your eyes without moving your head."(頭を動かさずに、指を目で追ってください)

ポイントは、これから行う動作を事前に説明し("I'm going to...")、患者が不安を感じないよう配慮することです。患者の協力を求める際には"Could you...?"よりも"Please..."のほうがシンプルで伝わりやすい場面が多いです。

検査説明・インフォームドコンセントの英語

検査や処置の説明においては、専門用語をそのまま使うのではなく、患者が理解できる表現に「翻訳」する力が求められます。これが学術英語と臨床英語の最大の違いです。

Lay Term化の例:

  • "MRI" → "a scan that uses magnets to take very detailed pictures of the inside of your body. It doesn't use radiation."
  • "Biopsy" → "We'll take a very small sample of tissue so we can look at it under a microscope."
  • "Angiography" → "a test where we put a thin tube into a blood vessel to take X-ray pictures of your arteries."

インフォームドコンセントでは、処置の目的・方法・リスク・代替案を英語で説明し、患者の理解を確認する必要があります。

  • "I'd like to explain the procedure we're recommending and make sure you understand before we proceed."
  • "The main risks include [risk 1] and [risk 2], but these are relatively uncommon."
  • "Do you have any questions about what I've explained?"
  • "Do you feel comfortable giving your consent, or would you like more time to think about it?"

結果説明と治療方針の伝え方

検査結果や診断を患者に伝える場面、特にBad News(悪い知見)を伝える際には、臨床英語のなかでも最も繊細なコミュニケーション力が求められます。

  • 結果を伝える前に前置き: "I have your test results. I'd like to go through them with you."
  • 悪い知らせを伝える: "I'm afraid the results show that..." / "Unfortunately, the scan has revealed..."
  • 感情への配慮: "I understand this is difficult news. Please take a moment if you need to."
  • 治療オプションの提示: "There are several treatment options we can consider. I'd like to explain each one so we can decide together which approach is best for you."
  • 患者の理解を確認: "I've covered a lot of information. Would you like me to go over anything again?"

医師の英語力レベル目安:場面別に求められる水準

医師に求められる英語力は、勤務環境やキャリアの方向性によって大きく異なります。以下に、場面別の英語力レベルを4段階で整理します。

レベル1:論文読解中心(TOEIC 600〜730相当)

英語論文を辞書を引きながら読むことができるレベルです。医学部入学時の受験英語の力を維持していれば到達可能です。国内で臨床に専念する場合、最低限このレベルは必要です。ただし、スピーキング力は十分でなく、国際学会での質疑応答や外国人患者への対応は困難です。

レベル2:学会発表+基本的な外国人患者対応(TOEIC 730〜860 / TOEFL iBT 79+)

準備したプレゼンを英語で行い、定型的な質疑応答にも対応できるレベルです。日本学術振興会の海外特別研究員の目安(TOEIC 730相当)もこの水準です。外国人患者への基本的な問診もフレーズを覚えていればこなせます。多くの大学病院勤務医や、国際学会に定期的に参加する医師が目指すべき水準です。

レベル3:学会ディスカッションリード+高度な臨床英語(TOEIC 860+ / IELTS 7.0+)

学会のシンポジウムでのディスカッション、座長としての進行、外国人患者への詳細なインフォームドコンセントやBad Newsの伝達が可能なレベルです。国際共同研究のテレカンファレンスでも主体的に発言できます。海外留学経験者や、外資系製薬企業のメディカルドクターに求められる水準です。

レベル4:海外臨床留学・英語圏での診療(IELTS 7.5+ / USMLE Step 2 CS水準)

英語圏の病院で患者を診療できるレベルです。Medical Interview(医療面接)を完全に英語で行い、カルテ記載(SOAP note)も英語で行えます。臨床留学を目指す場合はこの水準が必要ですが、研究留学であればレベル2〜3でも十分に活動可能です。

TOEICスコアより「場面ごとの実践力」が重要

医師の英語力において、TOEICのスコアはあくまで一つの指標に過ぎません。TOEIC 900点を持っていても学会のQ&Aでフリーズする医師もいれば、TOEIC 700点台でも学会で堂々と質疑応答をこなす医師もいます。重要なのは、自分が直面する場面(学会発表、外国人患者対応、論文執筆など)に特化した実践的トレーニングです。

多忙な医師のための効率的な英語学習戦略

医師は多忙です。当直、外来、手術、カンファレンス、論文執筆——英語学習に割ける時間は限られています。だからこそ、効率的かつ実務に直結した学習戦略が必要です。

論文多読 → 口頭サマリーの訓練サイクル(学術英語向け)

学術英語の基盤強化に最も効果的なのは、日常業務の延長線上にある学習です。毎朝1本のAbstract(抄録)を読み、その内容を3分間で英語で口頭要約する習慣をつけましょう。最初は録音して聞き返すと、自分の弱点(冠詞の脱落、時制の混乱、詰まる箇所)が明確になります。

また、自分の専門分野の論文に寄せられたCorrespondence(Letters to the Editor + Author's Reply)を定期的に読むことで、質疑応答のパターンを「読んで」学べます。どのような論点が問われ、著者がどのような英語で応答しているかを知ることは、学会Q&Aの最高の事前準備です。

学会発表シミュレーション型トレーニング

国際学会での発表が決まったら、原稿の暗記だけでは不十分です。最も効果的な準備は、想定Q&Aリストの作成とネイティブ講師との模擬Q&Aセッションです。

具体的には、研究のLimitations、統計手法への疑問、臨床的意義への質問など、想定される10〜15の質問と回答を英語で準備し、ネイティブ講師が質問者役を演じるシミュレーションを行います。想定外の角度からの質問にも英語で即応する訓練を2〜3回繰り返すことで、本番での不安が大幅に軽減されます。

臨床英語のロールプレイ:模擬問診トレーニング

臨床英語の習得には、実際の診療場面を再現したロールプレイが最も効果的です。ネイティブ講師が外国人患者役を演じ、医師が英語で問診→身体診察の指示→検査説明→結果説明という一連のフローを練習します。

たとえば、患者役が「I've been having this pain in my chest for about a week」と訴えた場合、医師はOPQRST法に沿って英語で痛みを詳しく聴取し、必要な検査を英語で説明し、最終的に診断と治療方針を英語で伝える——この一連の流れを繰り返し練習することで、実際の診療場面での対応力が飛躍的に向上します。

隙間時間活用リソース

多忙な医師の日常に組み込みやすい英語学習リソースを紹介します。

ポッドキャストは通勤や移動時間に最適です。NEJM(New England Journal of Medicine)のThis Week at NEJMやThe Lancet Podcastは、最新論文のサマリーを音声で聴けるため、専門知識のアップデートと英語リスニングの訓練を同時に行えます。BMJ Talk Medicineは臨床トピックをカジュアルに議論する形式で、医師の日常会話英語にも触れられます。

連載記事としては、リクルートドクターズキャリアの「すぐに使える医療英会話」シリーズが、日本人医師が間違えやすい表現に焦点を当てており実用的です。ケアネットの「学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術」も、海外で活躍する日本人医師による実践的な連載で参考になります。

オンライン教材では、MSLS(Medical Science Liaison Society)のウェビナーが医学的な文脈での英語プレゼンスキルを学べます。また、CourseraedXで提供されている医療英語コース(Medical English等)は、体系的な学習に有効です。

まとめ:学術英語と臨床英語の「二刀流」を目指す

医師にとっての英語力は、「学術英語」と「臨床英語」という2つの異なるスキルの掛け合わせです。論文が読めるだけでは学会のQ&Aは乗り切れず、学会で発表できても外国人患者にわかりやすく説明できるとは限りません。

今の自分にとって最も切迫したニーズ——来月の国際学会発表なのか、増える外国人患者への対応なのか、博士論文の英文執筆なのか——を見極め、そこに集中して実践的なトレーニングを行うことが、多忙な医師にとって最も効率的なアプローチです。

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まずはお気軽にご相談ください。医師の学術活動・臨床業務に精通した専門カウンセラーが、現在の英語力と直近のニーズ(学会発表、外国人患者対応、論文執筆など)をヒアリングし、最適なトレーニングプランをご案内します。学会Q&Aシミュレーション、模擬問診ロールプレイ、論文ライティング指導など、医師の実務に直結した英語レッスンをご用意しています。

よくある質問

A

TOEICは英語力を客観的に示す一つの指標としては有用ですが、医師の実務で求められる英語力を正確に測るものではありません。目安としては、論文読解中心ならTOEIC 700点程度、国際学会発表や基本的な外国人患者対応を行うなら730〜860点程度が一つの基準です。ただし、スコアよりも「学会で5分間自分の研究を英語で説明できるか」「外国人患者の主訴を英語で聞き取れるか」という実践力のほうが重要です。

A

AI翻訳ツールは下書きの効率化には有効ですが、それだけに頼るのはリスクがあります。AIが生成した英文が自分の意図するニュアンスを正確に反映しているか、専門用語の使い方が適切か、論理的な流れが維持されているかを判断する英語力は必要です。また、査読者からの質問に対するResponse Letterや、学会でのリアルタイムの質疑応答はAIでは代行できません。AIは「補助ツール」として活用し、核となる英語力は自分自身で維持・向上させることが重要です。

A

最低限の準備は3つです。第一に、自分の研究のLimitations(限界)に対する回答を英語で準備すること。質疑応答で最も多い質問はLimitationsに関するものです。第二に、質問が聞き取れなかった場合の切り返しフレーズ("Could you please repeat the question?"等)を暗記しておくこと。第三に、同じ分野の論文のCorrespondenceを読んで、質疑応答のパターンに慣れておくことです。これだけで、当日の不安は大幅に軽減されます。

A

まず覚えるべきは3つのフレーズです。(1) "What brings you here today?"(主訴の聴取)、(2) "When did it start?"(発症時期の確認)、(3) "Do you have any allergies to medications?"(薬物アレルギーの確認)。この3つを起点に、OPQRST法に沿った痛みの評価フレーズや、既往歴・服薬歴の確認フレーズを段階的に増やしていくのが効率的です。完璧な英語は必要ありません。発音より、正確に情報を伝えることが最優先です。

A

研究留学では、論文の読み書きとラボ内でのコミュニケーション(実験手順の議論、研究ミーティングでの発表)が中心です。TOEFL iBT 79〜90程度があれば活動は可能で、日常のコミュニケーションは多少不自由でも文章ベースでフォローできます。一方、臨床留学では実際に患者を診療するため、問診・身体診察・カンファレンスでのプレゼンテーション・カルテ記載(SOAP note)すべてを英語で行う必要があり、IELTS 7.5+やUSMLE Step 2 CS水準の実践的英語力が求められます。

執筆者について

田中 達也

田中 達也

ELT日本法人 代表

早稲田大学創造理工学部総合機械工学科を卒業後、同大学大学院に進学し、数値流体解析の研究に取り組む。大学院在学中、アメリカ・ヒューストンにあるライス大学で招聘研究員として宇宙船の流体シミュレーションに従事する。日本に帰国後は研究を継続する傍ら、ハーバード大学やインペリアル・カレッジ・ロンドンでキャリアフェアの開催を手掛ける。2019年には在学中にセキジン合同会社 (現 株式会社 ELT Education) を設立。2020年、英国法人 ELT School of English Ltd. と提携し、日本市場向けのオンライン英会話事業を開始。創業以来、1,000名以上の英語学習者のカウンセリングを行う。

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