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英語プレゼンの質疑応答(Q&A)完全攻略|鋭い質問をかわす「合気道」的テクニック

公開:
2026年最新
英語プレゼンの質疑応答(Q&A)完全攻略|鋭い質問をかわす「合気道」的テクニック - ELT英会話 英語学習コラム
田中 達也

執筆者: 田中 達也|ELT日本法人 代表

「プレゼン本編(スライド説明)は完璧だった。しかし、質疑応答(Q&A)で想定外の質問が飛んできた瞬間、頭が真っ白になってしまった」

TOEIC 900点を超えるハイクラスなビジネスパーソンであっても、Q&Aには苦手意識を持つ人が少なくありません。 なぜなら、多くの日本人はQ&Aを「正解を答えなければならない」と誤解しているからです。

しかし、欧米のビジネス文化において、Q&Aはテストではありません。それは「知的スパーリング(Intellectual Sparring)」です。 相手はあなたを尋問しているのではなく、議論を深めようとしているのです。

本記事では、マッキンゼーのパートナーやAppleのCEOなどが実践している、答えにくい質問をかわし、主導権を握るための高度な「合気道」的テクニックを解説します。

1. 答えにくい質問をかわす「Bridging(ブリッジング)」

「その質問には答えたくない」「トピックからズレている」──そんな時、まともに答えてはいけません。 プロのコミュニケーターは、Bridging(橋渡し)という技術を使って、相手の質問を認めつつ、自分の話したい「キーメッセージ」へと論点をすり替えます。

鉄則の「ABCメソッド」

メディアトレーニングでも教えられる基本の型です。

  1. Acknowledge(承認): 質問を受け止める
  2. Bridge(橋渡し): 接続詞で視点を変える
  3. Communicate(伝達): 自分の言いたいことを話す

実践フレーズ

単に "That's a good question" と言うのは初心者です。以下のようなフレーズで知的にブリッジをかけます。

  • "What’s important to remember is…"
    (ここで重要なのは…)
    質問の答えではなく、自分が「重要だと思うこと」へ話を強制的に移行させます。

  • "That’s an interesting angle. Let’s also consider…"
    (興味深い視点です。同時に、~についても考えてみましょう)
    相手の視点を認めつつ、別の土俵へ誘導します。

  • "I don't want to get bogged down in details. Looking at the big picture..."
    (詳細に入り込むよりも、大局的に見ると…)
    細かいツッコミを回避し、戦略やビジョンの話に持ち込む際に有効です。

事例:Apple CEO ティム・クックの妙技

あるインタビューで、クック氏は答えたくない法的な質問をされた際、こう切り返しました。 "That’s up to the lawyers, honestly.(それは弁護士の問題ですね)" と質問を切り捨て(Acknowledge)、すかさず "My primary focus is on the customers...(私の焦点は顧客にあります)" と、自分の得意な「顧客プライバシー」の話へブリッジしました。 これこそが、質問に答えつつ、自分の土俵で戦うプロの技術です。

2. 「分かりません」と言わずに信頼を守る危機管理術

どんなに準備しても、知らないデータや専門外の質問は来ます。 この時、単に "I don't know." と言うのは権威(Authority)を損ないますが、知ったかぶりをするのは最悪手です。

「知らない」を知的に言い換えるDeflection(回避)テクニックを使いましょう。

「部分回答」+「持ち帰り」のコンボ

「今は答えられない」ことを認めつつ、有益な情報(トレンドなど)を提供することで、相手の満足度を維持します。

  • "I don't have that specific data with me, but I can speak to the general trend..."
    (その具体的な数字は手元にありませんが、全体の傾向について言えば…)
    「数字はないが傾向なら話せる」と条件付きで答えます。

  • "Let me consult with my team and circle back to you."
    (チームと確認して、後ほど回答させてください)
    単なる「後で」ではなく、"consult with my team"(チームと協議する)と付け加えることで、慎重さと誠実さをアピールできます。

範囲外(Out of Scope)として線引きする

質問がマニアックすぎる場合は、丁重に回答を拒否するのもリーダーの仕事です。

  • "That touches on a strategic issue beyond today’s operational review."
    (それは今日のオペレーション会議の範囲を超えた、戦略的な話ですね)
    「質問が悪い」のではなく「今日のスコープ外である」と線引きします。

  • "I can see why you ask that; however, that lies outside the scope of our discussion today."
    (お聞きになりたい理由は分かりますが、それは本日の議論の範囲外です)。

3. 敵対的な質問を無力化する「Reframing(リフレーミング)」

"Why is your project failing so miserably?"
(なぜプロジェクトはこんなに酷い失敗をしたんだ?)
役員会やクライアントとの会議では、こうした感情的・攻撃的な質問が飛んでくることがあります。

これに "We are not failing!" とムキになって反論してはいけません。相手の土俵に乗ってしまうからです。 ネガティブな質問を、ポジティブまたは中立的な課題へとReframing(再定義)して返します。

感情を切り離し、論点をずらす

まず、相手の「感情」だけを受け止め(Validate)、その後に「論点」をすり替えます。

  • ステップ1:感情の承認 "I hear your frustration."
    (苛立たれるのも理解できます)
    まず相手のガスを抜きます。

  • ステップ2:質問の書き換え "So, your question is about the challenges we encountered and how we’re addressing them, correct?"
    (つまりご質問は、我々が直面した「課題」と、その「対処法」についてですね?)
    相手が言った "Failure(失敗)" という言葉を、"Challenge(課題)" という建設的な言葉に変換して確認します。

事例:スティーブ・ジョブズの伝説的切り返し

1997年、ジョブズは公衆の面前で「あなたは技術を分かっていない」と侮辱されました。 会場が凍りつく中、彼は怒らず、こう切り返しました。 "You’ve got to start with the customer experience and work backwards to the technology." (技術からではなく、顧客体験から始めなければならないのです) 彼は批判を受け止めつつ、論点を「技術知識の有無」から「顧客体験という哲学」へとリフレームし、最終的に会場から拍手喝采を浴びました。

4. 聞き取れない・考えたい時の「時間稼ぎ(Buying Time)」

鋭い質問に対し、即答しようとして焦る必要はありません。 沈黙(Silence)を恐れず、知的に時間を稼ぐフレーズを使って、脳をフル回転させる時間を確保しましょう。

パラフレーズで確認する

質問を聞き返すフリをして、自分の言葉で要約します。

  • "So, if I understand correctly, you’re asking about X in the context of Y, is that right?"
    (理解が正しければ、Yという文脈におけるXについてのご質問ですね?)
    これには3つのメリットがあります。

    1. 考える時間を稼げる。
    2. 相手に「Yes」と言わせることで主導権を取り戻せる。
    3. 回答しやすいように質問を微妙に修正できる。

知的なフィラー(繋ぎ言葉)

"Umm...""Well..." は自信なさげに聞こえます。代わりに以下のフレーズを使います。

  • "That’s an important question. (Pause)... The way I would approach it is..."
    (重要なご質問です。……私のアプローチとしては…)
    「重要な質問だ」と評価することで、相手を喜ばせつつ思考時間を確保します。

  • "Let’s break that down."
    (その点を分解して考えてみましょう)
    複雑な質問が来た時、即答せずに整理する姿勢を見せます。

結論:Q&Aは「ボクシング」である

Q&Aで完璧な正解を答える必要はありません。 必要なのは、パンチ(鋭い質問)が飛んできたら、ガードし(Deflection)、身をかわし(Reframing)、そして自分の得意なパンチ(Key Message)を打ち返すことです。

このマインドセットを持つだけで、Q&Aへの恐怖心は「ゲームへの闘争心」に変わります。

実践で「反射神経」を鍛える

これらのテクニックは、知識として知っているだけでは使えません。実際の会議で、息をするようにフレーズが出てくるまで「型」を体に染み込ませる必要があります。

ELTでは、ビジネス経験豊富なネイティブ講師が、あえて意地悪な質問や鋭いツッコミを投げかける「Q&A模擬トレーニング」を行っています。 業界や職種に合わせたリアルなロールプレイで、グローバルリーダーに必要な「切り返し力」を磨きませんか?

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執筆者について

田中 達也

田中 達也

ELT日本法人 代表

早稲田大学創造理工学部総合機械工学科を卒業後、同大学大学院に進学し、数値流体解析の研究に取り組む。大学院在学中、アメリカ・ヒューストンにあるライス大学で招聘研究員として宇宙船の流体シミュレーションに従事する。日本に帰国後は研究を継続する傍ら、ハーバード大学やインペリアル・カレッジ・ロンドンでキャリアフェアの開催を手掛ける。2019年には在学中にセキジン合同会社 (現 株式会社 ELT Education) を設立。2020年、英国法人 ELT School of English Ltd. と提携し、日本市場向けのオンライン英会話事業を開始。創業以来、1,000名以上の英語学習者のカウンセリングを行う。

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