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製薬企業のR&Dに求められる英語力:グローバル治験と論文読解を勝ち抜く

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2026年最新
製薬企業のR&Dに求められる英語力:グローバル治験と論文読解を勝ち抜く - ELT英会話 英語学習コラム
田中 達也

執筆者: 田中 達也|ELT日本法人 代表

「英語の学術論文(Paper)は日常的に読んでいるし内容も完璧に理解できる。しかし、海外のグローバル本社(HQ)とのテレカン(電話会議)になると、スピードについていけず一言も発言できない……」

製薬企業の研究開発(R&D)や臨床開発部門で働く優秀なプロフェッショナルの多くが、このような「サイエンスの知識」と「英語でのコミュニケーション能力」のギャップに悩まされています。

外資系製薬企業であればグローバルHQや各国の支社との頻繁なオンライン会議が避けられませんし、日本企業(内資)であっても、海外のCRO(開発業務受託機関)との折衝やライセンスアウトの交渉、国際学会(Congress)での発表など、ビジネスの現場で英語を運用する機会は急増しています。

本記事では、学術英語と製薬ビジネス英語の決定的な違いを明らかにし、グローバル治験や薬事交渉で必須となる専門用語、そして会議を生き抜くための実践的なフレーズをプロが徹底解説します。

1. 「読める」だけでは通用しない?アカデミック英語と製薬ビジネス英語の違い

論文を読み書きするための「アカデミック英語」と、会議や交渉で使う「製薬ビジネス英語」は、求められるスキルセットが全く異なります。

  • 一方向から双方向・リアルタイムへ: アカデミック英語は論文執筆などを念頭に、文法・用語の正確性や論理的構成を重視し、情報を一方向に届ける形式です 。一方、グローバル製薬ビジネスでは、会議で双方向かつリアルタイムにコミュニケーションを取る瞬発力が求められます 。

  • 沈黙は「無関心」のサイン: 米国などのビジネス文化では議論が素早く進み、沈黙していると「議論に参加していない(無関心である)」と受け取られるリスクがあります 。日本人研究者は慎重になりがちですが、積極的に意見を発信しないと影響力が低下してしまいます 。

  • コンプライアンス重視の交渉力: 製薬業界では規制当局のガイドライン遵守が厳格に要求されるため、正確かつ簡潔な表現が求められます 。ビジネスの場では、単に自説を展開するだけでなく、「○○のリスクがあるため△△案には懸念があります」と根拠を示しながら丁寧に異議を唱え、交渉・折衝を行う力が必要です 。

2. 【保存版】製薬R&D・臨床開発の必須英単語・略語リスト

グローバル会議や英文メールで頻出する、R&Dおよび臨床開発特有の略語と用語をまとめました。これらは説明なしで飛び交うため、瞬時に意味を理解できるようにしておく必要があります。

略語 / 用語

英語名称

日本語訳

ミーティングでの使用例

CRO

Contract Research Organization

治験受託機関

「CROがデータをまとめているので、今週中に報告書を共有できます。」

GCP

Good Clinical Practice

治験実施基準

「この変更はGCPのどの項目に抵触する可能性がありますか?」

IND

Investigational New Drug (application)

治験届(申請)

「IND承認後に治験を開始する予定です。」

NDA

New Drug Application

新薬承認申請

「米国でのNDA提出は来年に予定されています。」

AE

Adverse Event

有害事象

「治験中にAEが5件報告されました。」

SAE

Serious Adverse Event

重篤有害事象

「SAEが発生したので、速やかに安全部門にエスカレーションしました。」

KOL

Key Opinion Leader

主要オピニオンリーダー

「国内KOLの意見を聞いて、臨床戦略を再検討しましょう。」

Protocol

(Study) Protocol

試験計画書

「このプロトコル変更は倫理委員会に提出する必要があります。」

SOP

Standard Operating Procedure

標準作業手順書

「データエントリはSOPに従って行ってください。」

ICF

Informed Consent Form

説明同意文書

「すべての患者がICFに署名したことを確認しましたか?」

IRB

Institutional Review Board

倫理審査委員会

「IRB承認が下りるまで、新薬は開始できません。」

FDA

Food and Drug Administration

米国食品医薬品局

「FDAのガイダンス文書には○○と明記されています。」

EMA

European Medicines Agency

欧州医薬品庁

「EMA向け提出資料のフォーマットに従いましょう。」

PMDA

Pharmaceuticals and Medical Devices Agency

医薬品医療機器総合機構

「PMDAに問い合わせたところ、その表現でも問題ないとのことでした。」

ICH

International Council for Harmonisation

国際医薬品規制調和会議

「ICHガイドラインQ2(R1)に基づき、分析法の妥当性を示します。」

PV

Pharmacovigilance

薬剤安全監視

「PV担当者が最新の安全性情報を共有します。」

CTA

Clinical Trial Application (Japan)

治験届

「日本で新たな治験を開始するためにはCTA提出が必要です。」

CRF

Case Report Form

症例報告書

「全被験者のCRFが回収されたことを確認してください。」

3. 【職種別】R&D部門で直面する英語の壁と求められるスキル

製薬R&Dの現場では、担当する職種によって求められるコミュニケーションの性質が異なります。

基礎研究・非臨床 (Discovery / Pre-clinical)

海外の共同研究者とのデータ共有や、国際学会での発表が主な舞台となります 。複雑な実験結果を平易な英語で伝え、質疑応答(Q&A)に迅速に対応する力が求められます 。自分の研究成果を自信を持って発信し、論理的にディスカッションに参加する積極性が鍵となります 。

臨床開発・CRA (Clinical Development)

海外CROとの進捗会議、スケジュール交渉、プロトコル逸脱の報告などが日常業務です 。スケジュール調整などでは、「~することは可能でしょうか」といった丁寧で断定的になりすぎない英語表現が求められます 。プロトコル変更などの際は、データや規制リスクを根拠に相手と合意形成を図るタフな交渉力が必要です 。

薬事 (Regulatory Affairs / RA)

FDA、EMA、PMDAなど規制当局への申請書類作成や質疑応答が中心です 。各国の規制文書を正確に読み解き、「ガイドラインの第X節に従い〇〇を実施した」といった規制用語の適切な引用ができるライティングスキルが求められます 。回答時には必ず根拠を明示し、監督官庁との認識ズレを防ぐ配慮が必須です 。

メディカルアフェアーズ (Medical Affairs / MA)

グローバルKOLとの情報交換や学術資料の作成を担います 。科学的根拠をもとに説得力ある議論を行いつつ、感情的にならず中立性を保つことが重要です 。事実ベースでデータを説明し、「この結果を臨床上どう解釈しますか?」と相手の意見を引き出す高度なファシリテーション力が求められます 。

4. グローバル会議(テレカン)を生き抜く実践フレーズ

展開が早いグローバル会議において、日本人研究者が「自分の意見を挟む」「丁寧に反論する」「規制の詳細を確認する」ためのキラーフレーズを紹介します。

丁寧に発言を挟み込む(Interrupting politely)

議論が白熱していても、重要な安全性データなどは確実に伝える必要があります。一言断りを入れてから要点を述べましょう。

  • > “Sorry, can I just add something here?” (すみません、ここで少し付け加えてもよろしいですか?)

  • > “If I may jump in for a second…” (少しだけ入らせていただきたいのですが…)

  • > “Before we move on, may I add something?” (次の話題に進む前に、付け加えてもよいですか?)

論理的に反論・意見を述べる(Disagreeing logically)

スケジュールの前倒しなど、コンプライアンス上リスクがある提案に対しては、相手を尊重しつつデータや規制を根拠に異議を唱えます。

  • > “I see it differently because…” (~という理由で、私は異なる見方をしています)

  • > “That’s one perspective. Another way to look at it is…” (それは一つの見方ですね。別の観点から見ると…)

  • > “I’m concerned that this approach might pose a risk to safety compliance. How about we instead propose a slight delay and additional review?” (このアプローチは安全性のコンプライアンスにリスクをもたらす懸念があります。代わりに、少し期限を延ばして追加のレビューを提案するのはいかがでしょうか?)

規制の細かな点を確認する(Clarifying regulatory nuances)

FDAやEMAのガイドライン解釈に少しでも疑義がある場合は、誤解を避けるために正確を期す質問を投げかけます。

  • > “Could you clarify if we should interpret Section X of the guideline as…?” (ガイドラインのセクションXを~と解釈すべきか、明確にしていただけますか?)

  • > “I’m not entirely clear on how to apply the EMA guideline paragraph Y to our case. Could you elaborate on that?” (EMAガイドラインのY段落を今回のケースにどう適用するのか完全にクリアではありません。詳しく説明していただけますか?)

  • > “Just to make sure we’re aligned, does the FDA guidance mean that…?” (認識を合わせるための確認ですが、FDAのガイダンスは~という意味でしょうか?)

まとめ:マインドセットを「受動的」から「能動的」へ転換する

製薬R&Dの現場において、あなたが持つ高度なサイエンスの知識や深い洞察は、グローバル会議で「声に出して発言」しなければ存在しないのと同じになってしまいます。

受動的に論文を読む姿勢から脱却し、能動的に発言し交渉するマインドセットへの転換が必要です 。たとえ英語が完璧でなくても、「わからない」ことは隠さずに「確認して回答します」と前向きな姿勢を見せることが重要です 。相手に敬意を示しつつ、自信を持って議論に参加する意識を持ちましょう 。

「海外HQとのテレカンに向けた実践的なスピーキング対策をしたい」

「グローバル治験におけるCROとのタフな交渉フレーズを身につけたい」

このように、一般的な英会話ではなく「製薬業界特有のビジネス英語」を最短で引き上げたいとお考えのプロフェッショナルの方は、ぜひELTの個別カウンセリング・体験レッスンをご活用ください。

執筆者について

田中 達也

田中 達也

ELT日本法人 代表

早稲田大学創造理工学部総合機械工学科を卒業後、同大学大学院に進学し、数値流体解析の研究に取り組む。大学院在学中、アメリカ・ヒューストンにあるライス大学で招聘研究員として宇宙船の流体シミュレーションに従事する。日本に帰国後は研究を継続する傍ら、ハーバード大学やインペリアル・カレッジ・ロンドンでキャリアフェアの開催を手掛ける。2019年には在学中にセキジン合同会社 (現 株式会社 ELT Education) を設立。2020年、英国法人 ELT School of English Ltd. と提携し、日本市場向けのオンライン英会話事業を開始。創業以来、1,000名以上の英語学習者のカウンセリングを行う。

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