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シャドーイングの効果と正しいやり方|「音声知覚」を自動化するプロソディ・シャドーイング

公開:
2026年最新
シャドーイングの効果と正しいやり方|「音声知覚」を自動化するプロソディ・シャドーイング - ELT英会話 英語学習コラム
田中 達也

執筆者: 田中 達也|ELT日本法人 代表

「英語のスピードについていけない」 「単語は知っているのに、文になると聞き取れない」 「シャドーイングをやってみたけど、難しすぎて挫折した……」

リスニングに悩む学習者の多くが、一度は「シャドーイング(Shadowing)」という言葉を聞いたことがあるでしょう。同時通訳者の訓練法として知られ、いまや英語学習の定番となっています。

しかし、ただ漫然と英語をリピートするだけでは効果は薄いことをご存知でしょうか? 実は、シャドーイングには「プロソディ(音)」と「コンテンツ(意味)」の2種類があり、リスニング向上には前者のトレーニングが不可欠なのです。

本記事では、第二言語習得論(SLA)と脳科学の知見に基づき、「なぜシャドーイングで耳が良くなるのか」というメカニズムと、「脳に負荷をかけすぎない正しいやり方」を徹底解説します。

1. なぜシャドーイングでリスニングが伸びるのか?(科学的根拠)

シャドーイングとは、聞こえてくる音声を影(Shadow)のように追いかけて、ほぼ同時に発話するトレーニングです。 なぜこれがリスニングに効くのでしょうか? その鍵は「脳のメモリ配分」にあります。

リスニングの正体:「音声知覚」+「意味理解」

第二言語習得研究(SLA)では、リスニングのプロセスを以下の2段階で説明します。

  1. 音声知覚(Bottom-up Processing): 入ってきた音を単語として認識する処理。「/ˈæpl/」という音を「apple」という単語だと認識すること。
  2. 意味理解(Top-down Processing): 認識した単語と文法知識を使って、内容を理解する処理。「apple」=「赤い果物」とイメージすること。

認知心理学者のアラン・バドリー(Alan Baddeley)が提唱した「ワーキングメモリ(作業記憶)」モデルによると、私たちの脳が一度に処理できる容量には限界があります。 日本人の多くは、「音声知覚」に脳のリソース(ワーキングメモリ)を使いすぎている状態です。音を聞き取るだけで必死になり、肝心の「意味理解」に回すメモリが残っていない。これが「音は聞こえるけど、話の内容が入ってこない」現象の正体です。

シャドーイングの効果=「音声知覚の自動化」

シャドーイングの最大の目的は、「音声知覚」を無意識レベル(自動化)にすることです。

強制的に速いスピードで音を真似る訓練を繰り返すと、脳は「音の分析」を効率化しようとします。これを「自動化(Automatization)」と呼びます。 関西学院大学の門田修平教授らの研究によると、シャドーイングによって音声知覚が自動化されることで、脳のメモリが解放され、その分を「意味理解」に使えるようになります。結果として、英語がゆっくり聞こえるようになり、内容もスッと入ってくるようになるのです。

2. シャドーイングの2つの種類:プロソディとコンテンツ

シャドーイングには、目的別に2つの段階があります。「難しくて続かない」という人の多くは、いきなり上級者向けの「コンテンツ・シャドーイング」に挑戦してしまっています。

① プロソディ・シャドーイング(Prosody Shadowing)

  • 目的: 音声知覚の自動化(音に集中)
  • やり方: 意味は考えず、音のリズム・抑揚(プロソディ)・発音を完璧に真似ることに全集中します。
  • 対象: 初級~中級者、リスニングが苦手な人。
  • 重要性: まずはこの段階で「音の壁」を突破しない限り、意味理解のトレーニングは効果が出ません。

② コンテンツ・シャドーイング(Content Shadowing)

  • 目的: 意味理解の高速化(内容に集中)
  • やり方: 音を真似つつ、頭の中で意味や情景をイメージしながら発話します。
  • 対象: 上級者、「音は聞こえるけど意味処理が追いつかない」人。

この記事では、まず初心者が取り組むべき「プロソディ・シャドーイング」の手順を解説します。

3. 【実践編】効果が出るプロソディ・シャドーイングの5ステップ

研究に基づいた、最も効果的で挫折しにくい手順を紹介します。 いきなりシャドーイングするのではなく、準備運動を挟むのが成功のコツです。

Step 1: 音源を聞く(Listening)

まずはテキストを見ずに、全体を通して聞きます。どのくらい聞き取れるか、現状の実力を確認しましょう。

Step 2: 意味を確認する(Mambling & Check)

ここが非常に重要です。スクリプト(台本)を見て、分からない単語や文法を完全に無くします。 脳科学的に、意味の分からない音をリピートしても、脳はそれを「雑音」として処理してしまい、学習効果が薄れます(認知負荷理論)。必ず「読んで分かる」状態にしてから次に進みましょう。

Step 3: オーバーラッピング(Overlapping)

スクリプトを見ながら、音声とピッタリ同時に読み上げます。 ズレずに言えるようになるまで繰り返します。これにより、文字(スペル)と音のギャップを埋めます。

Step 4: プロソディ・シャドーイング(Prosody Shadowing)

スクリプトを見ずに、聞こえてくる音だけを頼りに、2〜3語遅れて発話します。 意味は考えなくてOKです。「歌手のモノマネ」をするつもりで、リズム、強弱、息継ぎまで完全にコピーしてください。

Step 5: 録音して確認(Check)

自分の声をスマホで録音し、モデル音声と聞き比べます。 「リズムが遅れていないか」「弱く発音される音(弱形)が言えているか」を客観的にチェックします。これが修正(フィードバック)となり、上達を加速させます。

4. よくある失敗と「効果が出ない」原因

1. 教材が難しすぎる(i+1の原則違反)

「CNNニュース」や「洋画」など、難しすぎる・速すぎる教材を使っていませんか? 言語学者クラッシェンが提唱する「i+1(自分のレベルより少しだけ高い)」教材を選ばないと、脳がパニック(認知過負荷)を起こし、学習効果がゼロになります。 目安は「スクリプトを読んで8〜9割理解できる」「スピードについていける」ものです。

2. 「我流の発音」でボソボソ言っている

小声でモゴモゴ言っても、音声知覚は鍛えられません。 プロソディ・シャドーイングの肝は、英語特有の「強弱リズム」と「音の連結(リエゾン)」を再現することです。口をしっかり動かし、モデル音声をコピーしましょう。

3. スクリプトを見ながらやっている

スクリプトを見ながらの発話は「音読」や「オーバーラッピング」であり、シャドーイングではありません。 文字を見ていると、脳は「視覚情報」に頼ってしまい、「聴覚情報」を処理する回路が育ちません。仕上げは必ず「音だけ」で行ってください。

主な参考文献・先行研究

本記事は、以下の第二言語習得論(SLA)および認知心理学における研究論文・専門書を参照して作成しました。

  1. シャドーイングの効果とメカニズムについて
Shadowing as a Practice in Second Language Acquisition: Connecting Inputs and Outputs (Routledge Research in Language Education) (English Edition)

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シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学

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  • ワーキングメモリと認知負荷について
  • ※本記事で解説した「プロソディ・シャドーイング」の概念およびトレーニング手順は、主に関西学院大学名誉教授・門田修平氏らの研究モデルに基づいています。

    まとめ:シャドーイングは「耳の筋トレ」

    シャドーイングは魔法ではありません。脳の回路を書き換える地道なトレーニングです。 しかし、プロソディ・シャドーイングで「音声知覚」を自動化できれば、ある日ふと「あれ、英語がゆっくり聞こえる!」というブレイクスルーが必ず訪れます。

    まずは1日10分、好きな教材のワンフレーズから始めてみませんか?

    「自分のシャドーイングが合っているか不安」な方へ

    シャドーイングは正しいフォームで行わないと効果が出にくいトレーニングです。 「教材の選び方が分からない」「自分の発音のどこが悪いのか知りたい」という方は、ELTの体験レッスンをご活用ください。 ネイティブ講師があなたの英語力を診断し、最適なシャドーイング教材とトレーニング方法を提案します。

    執筆者について

    田中 達也

    田中 達也

    ELT日本法人 代表

    早稲田大学創造理工学部総合機械工学科を卒業後、同大学大学院に進学し、数値流体解析の研究に取り組む。大学院在学中、アメリカ・ヒューストンにあるライス大学で招聘研究員として宇宙船の流体シミュレーションに従事する。日本に帰国後は研究を継続する傍ら、ハーバード大学やインペリアル・カレッジ・ロンドンでキャリアフェアの開催を手掛ける。2019年には在学中にセキジン合同会社 (現 株式会社 ELT Education) を設立。2020年、英国法人 ELT School of English Ltd. と提携し、日本市場向けのオンライン英会話事業を開始。創業以来、1,000名以上の英語学習者のカウンセリングを行う。

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