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IB初等教育「PYP」とは?教科がないって本当?探究学習の仕組みと学力の真実を徹底解説

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公開:
2026年最新
IB初等教育「PYP」とは?教科がないって本当?探究学習の仕組みと学力の真実を徹底解説 - ELT英会話 英語学習コラム
田中 達也

執筆者: 田中 達也|ELT日本法人 代表

インターナショナルスクールやIB認定校への進学を検討する際、最初に出会うのが「PYP(Primary Years Programme)」という言葉です。

3歳〜12歳を対象としたこの初等教育プログラムは、日本の従来型教育とは全く異なるアプローチをとるため、保護者の皆様からはこのような不安の声がよく聞かれます。

  • 「教科ごとの教科書がないって本当? 算数や国語はどうやって学ぶの?」
  • 「探究学習(Inquiry-based learning)と聞くと、ただ遊んでいるだけに見えて心配…」
  • 「漢字ドリルや計算ドリルをしないで、中学校以降の学習についていけるの?」

結論から申し上げますと、PYPは単なる自由保育ではありません。それは「概念(Concepts)」と「学ぶためのスキル(Skills)」を体系的に育てる、世界標準の高度なカリキュラムです。

本記事では、PYPの仕組み、教科横断型学習の具体例、そしてデータが証明する「学力」の真実について、専門的な視点から解説します。

1. PYPの核心:6つの「教科横断型テーマ」とは?

PYPの最大の特徴は、「国語」「算数」「理科」といった教科ごとの枠組みで時間割が組まれていないことです。

代わりに、6つの「教科横断型テーマ(Transdisciplinary Themes)」を中心に学習が進みます。

世界共通の6つのテーマ

PYPでは、以下の6つのテーマを毎年(学年ごとにレベルアップしながら)繰り返し探究します。

  1. Who we are (私たちは誰か): 自己、家族、人間関係、権利と責任など。

  2. Where we are in place and time (私たちはどのような場所と時代にいるのか): 歴史、地理、人類の移動など。

  3. How we express ourselves (私たちはどのように自分を表現するか): 言語、芸術、文化、感情表現など。

  4. How the world works (世界はどのように動いているのか): 自然界の法則、科学技術、社会への影響など。

  5. How we organize ourselves (私たちはどのように自分たちを組織するか): 社会システム、経済、組織、意思決定など。

  6. Sharing the planet (地球の共有): 環境問題、資源の分配、平和、共生など。

出典: International Baccalaureate Organization

教科はどう統合されるのか?

「テーマの中で教科を学ぶ」とはどういうことでしょうか?

例えば、「Sharing the Planet(地球の共有)」というテーマで、「環境と持続可能性」について学ぶ単元(Unit)を例に見てみましょう。

教科(科目)

この単元での学習内容(具体例)

Science (理科)

地球温暖化のメカニズムや生態系サービスについて、科学的な実験・観察を行う。

Math (算数)

気候変動のデータを収集し、グラフ化統計分析(平均気温の推移など)を行う。

Language (言語)

環境問題に関する文献を読み解き(読解)、自分の調査結果をまとめて説得力のある意見文(Opinion Writing)を書く。

Social Studies (社会)

世界の環境保護活動や、地域社会の課題を調査し、解決策を議論する。

Art (芸術)

環境メッセージを伝えるポスターをデザインしたり、廃材を使ったアート作品を制作する15。

このように、PYPでは「算数の時間だからグラフを書く」のではなく、「環境問題を解決するためにデータ分析が必要だから、算数(グラフ)を使う」という文脈で学びます。

知識がバラバラに存在するのではなく、実社会の課題とリンクするため、「生きた知識(Deep Learning)」として定着するのです。

2. 授業スタイル:「探究サイクル」と子ども主体の学び

PYPの教室では、先生が黒板の前に立って一方的に教える姿はあまり見られません。代わりに、子どもたちが「探究サイクル(Inquiry Cycle)」を回しながら学びを進めます。

探究サイクルの4ステップ

  1. 問いを立てる (Question): 先生が答えを教える前に、子どもたちが「なぜだろう?」「もっと知りたい」という疑問を出し合います。

  2. 調べる (Research): 本、インターネット、実験、インタビューなどを使って、自分たちで情報を集めます。

  3. まとめる (Organize & Conclude): 集めた情報を分析し、自分なりの答えや結論を導き出します。

  4. 発表・行動する (Take Action): 学んだことをプレゼンしたり、実際にゴミ拾い活動をしたりするなど、実社会へのアクションにつなげます。

Student Agency(学習者の主体性)

このプロセスで重要なのは、「Student Agency(主体性)」です。

学ぶ内容や方法について、子どもたち自身が「声(Voice)、選択(Choice)、責任(Ownership)」を持つことが推奨されます。

「やらされる勉強」ではなく「自ら決めて学ぶ」経験が、高い自己肯定感と、生涯学び続ける姿勢を育みます。

3. 「基礎学力はつくのか?」への科学的検証

保護者の方が最も心配される「ドリルをしないで学力はつくのか?」という点について、世界的な調査データが答えを出しています。

結論:PYP生の学力は、標準以上です。

  • 国際比較テスト(ISA)の結果:

    2009〜2011年の調査において、PYP生は非IB生と比較して、「数学(Math)」「読解(Reading)」「文章表現(Writing)」の全ての分野で高い成績を収めました。

  • 理科の成績(オーストラリア):

    全国調査において、PYP校の児童は全国平均を上回る理科のテスト結果を残しています。

なぜ学力がつくのか?

PYPは「知識を軽視」しているわけではありません。各国の学習指導要領(ナショナルカリキュラム)で求められる知識は、6つのテーマの中に巧みに組み込まれています(POI: Program of Inquiry)。

単なる暗記ではなく、「概念(Concepts)」として深く理解しているため、応用が利きやすく、テストでも結果が出せるのです。

さらに、PYPでは知識だけでなく「ATLスキル(学習へのアプローチ)」を評価します。

  • 思考スキル(Thinking)
  • コミュニケーションスキル(Communication)
  • 社会性スキル(Social)
  • 自己管理スキル(Self-management)
  • リサーチスキル(Research)

これらは、知識が陳腐化しやすいAI時代において、最も重要とされる「汎用的な能力」です。

4. PYPの集大成:「The Exhibition(エキシビション)」

PYPの最終学年(G5またはG6)では、学びの集大成として「PYPエキシビション(Exhibition)」が行われます。

これは単なる発表会ではありません。子どもたちが自ら社会的課題(貧困、差別、環境など)を選び、数ヶ月かけてチームで調査・研究を行い、解決策を提言する「卒業研究プロジェクト」です。

  • リサーチ力: 文献調査や専門家へのインタビュー。
  • 協働力: チームでの議論と合意形成。
  • プレゼン力: 英語での論理的な発表と質疑応答。

エキシビションを終えた子どもたちは、中学生顔負けのリサーチ力と自信を身につけ、次なるステージ(MYPや中学校)へと巣立っていきます。

5. PYPの効果を最大化するために:家庭とELTの役割

PYPは、これからの時代に必要な「正解のない問いに挑む力」を育む素晴らしいカリキュラムです。

しかし、その自由度の高さゆえに、「言語力(英語)」と「探究スキル」の土台がないと、ただの「お遊び」で終わってしまうリスクもゼロではありません。

特に、英語が第二言語である日本人のお子様の場合、

  • 「英語力が足りず、議論に入れない」
  • 「リサーチの方法がわからず、ネットのコピー&ペーストになる」

といった壁にぶつかることがあります。

ELTのアプローチ

ELTでは、PYPに通うお子様が探究学習を最大限楽しめるよう、「Inquiry(探究)」の基礎体力づくりをサポートしています。

  • アカデミック英語の補強: 探究に必要な語彙や、論理的な文章の書き方を指導します。
  • 探究プロセスの伴走: エキシビションやUnitの課題に対して、「どう問いを立てるか」「どう調べるか」を一緒に考え、自走できるよう導きます。

PYPという最高の学習環境を活かすために。

学校だけではカバーしきれない「個別の探究サポート」を、ぜひご活用ください。

執筆者について

田中 達也

田中 達也

ELT日本法人 代表

早稲田大学創造理工学部総合機械工学科を卒業後、同大学大学院に進学し、数値流体解析の研究に取り組む。大学院在学中、アメリカ・ヒューストンにあるライス大学で招聘研究員として宇宙船の流体シミュレーションに従事する。日本に帰国後は研究を継続する傍ら、ハーバード大学やインペリアル・カレッジ・ロンドンでキャリアフェアの開催を手掛ける。2019年には在学中にセキジン合同会社 (現 株式会社 ELT Education) を設立。2020年、英国法人 ELT School of English Ltd. と提携し、日本市場向けのオンライン英会話事業を開始。創業以来、1,000名以上の英語学習者のカウンセリングを行う。

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