インターナショナルスクールの中等部(G6〜G10相当)にあたるMYP(Middle Years Programme)は、保護者の方々にとって最も「実態が見えにくい」プログラムかもしれません。
- 「PYPのような探究学習が続くのか、それとも急に勉強が難しくなるのか?」
- 「テストで100点を取っても成績が『7(最高評価)』にならないのはなぜ?」
- 「IGCSE(英国式)と比べて、大学進学にはどちらが有利?」
MYPはしばしば「中だるみ(Middle Years Gap)」の時期と誤解されがちですが、実際には大学進学資格(DP)で成功するための思考力を養う、極めて重要な「学問的探究」の期間です。
本記事では、MYPのカリキュラム構造、独特な評価基準(Criteria)、そしてIGCSEとの比較について、最新データをもとに解説します。
1. MYPカリキュラムの構造:8教科と「グローバルな文脈」
PYPでは6つのテーマを中心とした「教科横断型」でしたが、MYPではより専門的な8つの教科グループに分かれます。
- Language and Literature(言語と文学 / 母語)
- Language Acquisition(言語習得 / 第二言語)
- Individuals and Societies(個人と社会)
- Sciences(理科)
- Mathematics(数学)
- Arts(芸術)
- Physical and Health Education(保健体育)
- Design(デザイン)
教科をつなぐ「グローバルコンテクスト」
教科ごとの専門性は高まりますが、IB特有の「つながり」は消えません。
MYPでは「Global Contexts(グローバルな文脈)」というレンズを通して、各教科を現実世界と結びつけます。
- 例:数学(統計)× グローバルコンテクスト(公平さと開発)
単に計算ドリルを解くのではなく、「世界の貧困データを分析し、不平等の原因を数学的に証明する」といった課題に取り組みます。
これにより、「事実(Fact)」だけでなく「概念(Concept)」を学ぶ高度な学習へと進化します 。
2. なぜ満点でも「7」じゃない?複雑な評価基準(Criteria)の正体
MYPで保護者が最も戸惑うのが、その評価方法(Assessment)です。
MYPには「0点〜100点」という概念がありません。代わりに、各教科4つの評価観点(Criteria A-D)があり、それぞれ最高8点で評価されます(合計32点満点を1-7の成績に換算)。
【図解】数学の評価基準(例)
「答えが合っていれば正解」ではないのがMYPの厳しさです。
Criteria(評価観点) | 何が問われるか?(数学の例) |
A: Knowing and understanding (知識と理解) | 公式を使って正しく計算できるか。(いわゆるペーパーテスト) |
B: Investigating patterns (パターンの探究) | 複雑な問題から数学的な法則やパターンを自力で見つけ出せるか。 |
C: Communicating (コミュニケーション) | 自分の解法や論理プロセスを、数学的記号や言葉を使って他者にわかりやすく説明できるか。 |
D: Applying mathematics in real-life contexts (実社会への応用) | 数学を使って現実の課題(例:橋の建設コスト計算)を解決できるか。 |
ご覧の通り、計算力(A)だけでは全体の4分の1しか評価されません。
「なぜその答えになるのかを論理的に説明する力(Criterion C)」や「現実社会での活用力(Criterion D)」がなければ、どんなに計算が速くても成績は伸びない仕組みになっています。
これが、MYPが「DP(大学予科)への準備期間」と呼ばれる所以です。DPの最終試験や論文(Internal Assessment)では、まさにこの「論理的説明力」が合否を分けるからです。
3. MYP vs IGCSE:大学進学(DP)に有利なのはどっち?
同時期(14-16歳)のカリキュラムとして、英国式のIGCSEと比較されることがよくあります。
どちらが優れているということはありませんが、「DP(国際バカロレア・ディプロマ)への接続」という点では明確な違いがあります。
項目 | MYP (IB中等教育) | IGCSE (英国式) |
学習スタイル | 探究・プロセス重視。 レポートやプレゼンが多く、「なぜ?」を問い続ける。 | 知識・試験重視。 シラバス(範囲)が決まっており、最終試験での高得点を目指す。 |
評価方法 | 4つのCriteriaによるルーブリック評価(記述式が多い)。 | 外部統一試験(ペーパーテスト)の結果が全て。 |
DPへの接続 | ◎非常にスムーズ。 DPで求められる「探究スキル」や「レポート執筆力」が既に身についているため、高得点を狙いやすい 。 | △切り替えが必要。 暗記中心の学習から、DPの探究型学習への適応に苦労する場合がある(ただし基礎知識は強固になる)。 |
統計的にも、MYPを修了した生徒は、そうでない生徒に比べてDPでの合格率や平均スコアが高いという研究結果が出ています 。
DPを目指すのであれば、早期からIB流の思考法(Criteria思考)に慣れておくMYPルートは理にかなっています。
https://www.eltschool.jp/column/british-curriculum-alevel-igcse-guide
4. 集大成「パーソナルプロジェクト」:15歳の卒業論文
MYPの最終学年(G10)では、「Personal Project(パーソナルプロジェクト)」という個人探究活動が必修となります。
- 内容: 自分でトピックを決め、目標を設定し、数ヶ月かけて成果物を作成し、レポートにまとめる。
- 例: 「持続可能なファッションブランドの立ち上げ」「認知症予防のためのアプリ開発」など。
これは単なる自由研究ではありません。DPの「Extended Essay(課題論文)」の前哨戦であり、大学入試における「自己アピール(課外活動実績)」としても強力な武器になります。
ここで「自律的にプロジェクトを完遂する力」を証明できれば、DPでの成功はぐっと近づきます 。
5. 結論:DP成功の鍵は「アカデミック英語」の完成
MYPは「中だるみ」どころか、DPで戦うための武器(思考力・記述力)を磨く、最も過酷で重要な期間です。
しかし、その独特な評価基準(特にCriteria C/D)で高得点を取るためには、日常会話レベルではない「高度なアカデミック英語力」が不可欠です。
- 「数学の解法を英語で論理的に説明できない」
- 「レポートの構成が甘く、評価されない」
こうした課題を抱えたままDPに進むと、授業についていけず苦労することになります。
ELTがサポートできること
ELTでは、MYP生の成績向上とDP準備を専門的にサポートしています。
- Criteria対策: 教科ごとの評価基準(ルーブリック)を分析し、評価されるレポートの書き方を指導します。
- 理数科目の英語指導: MathやScienceのCriteria B/C/Dに対応した、「英語で考え、説明する」トレーニングを行います。
- Personal Project伴走: テーマ設定からレポート執筆まで、ネイティブ講師がマンツーマンでアドバイスします。







